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「中学歴史 平成30年度文部科学省検定不合格教科書」という本が、Amazonで爆発的に売れているのはご存知でしょうか。
本書は、昨年度の文部科学省教科書検定に申請して「不合格」となった教科書が元となっており、その出来損ないの教科書を、「不合格教科書」として販売しているのです。
著者はネトヨウで有名な竹田恒泰。
今回の記事では竹田恒泰が作成した教科書が検定に不合格した理由や、今までの教科書と違うところも解説していきます。
文部科学省教科書検定に申請して「不合格」の理由
昨年度の文部科学省教科書検定に申請して「不合格」となった教科書「不合格教科書」。
教科書用図書検定審査議員から「重大な欠陥がある」と事前通知を受け、竹田恒泰は申請を取り下げました。
不合格の理由はいくつかあります。
まず一般的な日本史の教科書では、旧石器時代から古墳時代までを「原始・古代」として記載されていますが、「不合格教科書」が第一章にもってくるのは、なんと「神代・原始」なんです。
要するに、日本神話、つまりファンタジーから教科書がスタートするんです。
しかも、神代から古代の範囲が教科書の3割から4割を占めるから驚きです。
【以下引用】
一般的な日本史の教科書では、旧石器時代から古墳時代までを「原始・古代」として土器等の発掘物や古代中国の史書などをもとに概説する。ところが、『不合格教科書』が第一章にもってくるのは「神代・原始」。つまり、天地開闢の日本神話(ファンタジー)からスタートするのである。
【引用元:LITERA/リテラ】
ただ、竹田恒泰は日本人が日本人の為に教科書を作成すると、愛国心に繋がる起源を書く必要があり、それが今は出来ていないと語っており、ふざけてやっている訳ではないようです。
竹田恒泰「“日本人による日本人の為の歴史教科書”がよい教科書。今は“外国人による外国人の為の教科書”が多い。GHQの検閲基準で天皇・国家的拡張・愛国心に繋がる用語・神話・起源・英雄・神道・祭祀を不可だった。GHQから占領教育方針を引継いだのが日教組で、英雄的皇族の話は終戦後消されたまま」 pic.twitter.com/vAU6XzmhBf
— Dappi (@dappi2019) June 27, 2019
今の教科書が間違っていると意思を強く持ち教科書を作成するのは良いですが、この「不合格教科書」は誤字脱字が非常に多く、教科書と思えないほど初歩的な間違いが多いことが特徴です。
例えば、1882年に渡米した伊藤博文について『ドイツのワイマール憲法などを参考に憲法について学びました。』と記載されているのですが、これは大きな間違いであり、実際には、伊藤博文らによる大日本帝国制度に影響をあたえたのはプロイセン憲法です。
【以下引用】
明治15年(1882年)3月3日、明治天皇に憲法調査のための渡欧を命じられ、3月14日、河島醇・平田東助・吉田正春・山崎直胤・三好退蔵・岩倉具定・広橋賢光・西園寺公望・伊東巳代治ら随員を伴いヨーロッパに向けて出発した。はじめベルリン大学の公法学者、ルドルフ・フォン・グナイストに教示を乞い、アルバート・モッセからプロイセン憲法の逐条的講義を受けた。のちにウィーン大学の国家学教授・憲法学者であるローレンツ・フォン・シュタインに師事し、歴史法学や行政について学ぶ。これが帰国後、近代的な内閣制度を創設し、大日本帝国憲法の起草・制定に中心的役割を果たすことにつながる。
【引用元:伊藤博文 – Wikipedia】
このように歴史について専門的な知識を持たずに、教科書を作ろうとした思考のヤバさが伺えます。
また、『対米戦争に勝算はあったのか』というコラムの中で、対米戦争で日本が勝てたと大々的に主張しているのも非常に問題があります。
【以下引用】
〈日本とアメリカは国力を比較すると、圧倒的にアメリカの方が大国です。しかし、日米の海軍力を比較すると日本もそれなりの力を持っていたことが分かります。〉
〈無論、国力が異なるので長期戦になったら不利ですが、短期か中期であれば、互角どころか、有利に戦える可能性があったのです。
戦後になって「勝てるはずがない戦争」といわれることがありますが、兵力差などから分析すると、短期戦あるいは中期戦なら「勝ってもおかしくない戦争」、もしくは「勝たないまでも負けなかった戦争」であると言えます。〉
【引用元:LITERA/リテラ】
このように、過去の話を自分の好き勝手に喋っているだけで、何の理論もなければ証拠も提示しておらず、全て竹田恒泰の妄想と言って良いでしょう。
ただ竹田恒泰も、さすがの間違いに気づいて自身のブログで「正誤表」を公開しているのですが、その内容が誤字脱字の訂正では済まず、そもそも内容が変わってくるのでは?という訂正の仕方をしています。
【以下引用】
P153「ドイツのワイマール憲法などを」→「ドイツのビスマルク憲法などを」(第4刷で訂正)P153「ワイマール憲法とは、第一次世界大戦に敗北したドイツ帝国が崩壊したあとに制定されたドイツ憲法のことです」→「ビスマルク憲法とは明治四年(一八七一)に制定されたドイツ帝国の憲法で、ドイツ帝国憲法とも呼ばれています」(第4刷で訂正)
P167「オーストラリア」→「オーストリア」(第6刷で訂正)
P181「オランダとドイツ」→「オランダとフランス」(第5刷で訂正)
P188「多くの台湾人と朝鮮人が」→「一部の台湾人と朝鮮人が」(第4刷で訂正)
同 「サイパン」→「マリアナ諸島」(2ヶ所)(第5刷で訂正)
【引用元:竹田恒泰の楚々たる毎日】
憲法の名称を間違えたり国を間違えたりと、これはうっかり間違えたというより、竹田恒泰がそう認識していたと考えた方が自然です。
今までの教科書と違うところ
神代から古代の範囲が教科書の3割から4割を占める「不合格教科書」ですが、それ以外にも一般的な教科書との違いがいくつかあります。
今の中学の歴史教科書は全て横書きですが、竹田恒泰の教科書は縦書きになっているのです。
また竹田恒泰の作成した教科書は写真や絵は1つもないため、版権使用料もデザイン料もかからないのです。
当然竹田恒泰が執筆しているので執筆料もいらないですし、本来なら4000万から5000万かかる製作費が、約120万円で製作可能なのです。
【以下引用】
写真も絵もおよそ版権のある夾雑物は無く、したがって版権使用料もデザイン料もかからない、執筆料もいらない、超超低廉なコスト(聞けば総額120万円だそうです)で仕上げた教科書を検定に出しました。
【引用元:中谷良子のブログ】
竹田恒泰は教科書作成において、売れることより理想の教科書を作ることを優先したと語っています。
【以下引用】
これは検定を通すことが目的なんです。学校に採択されなくてもOKなんです。あるべき教科書があればいい。
しかし。他のどこの教科書も採択されたいから売れる教科書を作ろうとするんです。
【引用元:さくらの花びらの「日本人よ、誇りを持とう」】
文部科学省からの指摘内容
誤字脱字や、初歩的なミスが多い「不合格教科書」ですが、それ以外にも不合格になった理由はいくつかあります。
文科省からの「検定申請図書に係る検定審査不合格の理由の事前通知」が掲載されており、そこに不合格の理由が紹介されています。
【以下引用】
〈学習する上で必要と思われる諸資料が極端に少なく、資料に基づき考察することが非常に困難である。〉
〈特定の時代や題材に偏った構成となっており、全体として調和がとれていない。〉
〈学習した内容を活用してその時代を大観し表現する活動に関する記述が見られないなど、我が国の歴史の大きな流れを各時代の特色を踏まえて理解させるには不十分である。〉
【引用元:LITERA/リテラ】
【不合格教科書】巻末に、文部科学省から送られてきた「検定申請図書に係る検定審査不合格の理由の事前通知について」の全文を掲載しました。学習指導要領に照らして「重大な欠陥」があるので不合格とのこと。我々は今年の検定での合格を目指しています。徹底的に手を加えすでに検定に提出しました。 pic.twitter.com/OPaW9mXmen
— 竹田恒泰 (@takenoma) June 3, 2019
このように文部科学省から通知されているわけですが、教科書作成段階で初歩的な間違いに気づかなかったことが不思議で仕方ないです。
本来の目的は文部科学省検定に合格するより、不合格になったことを演出することで世間の注目を集め「不合格教科書」の売上目的だったのではないかという意見まであるほどです。
実際、著者は竹田恒泰と「竹田研究会学生部」の学生で、歴史について専門的な知識をもっている人間はいないため、思想や意気込みは結構ですが、もう少し知識のある人間を監修につけるべきだったでしょう。
ただ、ネトウヨという言葉があるように、竹田恒泰の教科書を物凄く評価している人も一定数いることもうかがえます。
今更ながら、竹田恒泰さんの不合格教科書読んでる。
— タニグク (@tao1112) July 27, 2019
『中学歴史 平成30年度 文部科学省検定不合格教科書』竹田恒泰著
が売れていて、刷っても刷っても足りないそうですね。「 世界各国略年表は、日本、日本、日本、日本・・・!」歴代皇位継承図も掲載されているとか。これこそ日本の教科書だという意見も多いです。 pic.twitter.com/HeRwnNkUiZ— クサノネ新書 (@kusanonenewbook) June 12, 2019
広島竹田研究会でやっと不合格教科書かえた!!
古代なげぇー!!!おもしろすぎ! pic.twitter.com/z7LS7XnNDB— 明智春泥 (@harudolo) June 19, 2019
コメント
この記事は馬鹿にしたような書き方をしてますが、竹田恒泰氏は、教科書作成のノウハウがあるわけではないので、不合格は仕方がないでしょう。
現在、修正、改良を加えて第二弾を作成しているようなので、真面目に合格を目指していることは確かかと思います。
物事を疑うことは学びの始まりと思います。
今の歴史観に新たな見方を提供したいという彼の意思は、尊重すべきものではないでしょうか。
そしてそれが議論を産み、最終的にはそれぞれが何かしらの結論を得るのです。
それがわからないこの記事の筆者は、きっと何事からも学ばないのでしょう。